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by supersonicxxx
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ベルトルッチの「分身」

ベルトルッチの「分身」みてきました。お話はドストエフスキーの作品をベースにしてるとかなんとかいってますが、いわゆる「不条理な殺人事件」が三回おきるだけで、あとは唐突に芸術論がくりひろげられたり、おきにいりの古典のフレーズがくりかえされるだけという、ある種のアートな作品にありがちなこっぱずかしい展開。ベルトルッチ先生の作品なのにこれまで劇場公開されなかったことがおおいにうなずけます。はずかしいけどあとからふりかえるといいところもあるんだよね、という卒業制作みたいな作品です。

ピエール・クレマンティが好きなので、彼の主演作の一本としてみにいったのですが、みはじめたらパゾリーニの映画やゴダールの映画と似ているので、おおそうだった、同時代人だし、そもそもお仲間(ベルトルッチはパゾリーニの助監督をつとめました。作家だったパゾリーニに映画のいろはを教えたのは彼ともいわれています)だったよね、とちがう方向で感激してみてしまい、あまり純粋にたのしめませんでした。

ほこりっぽいローマはパゾリーニのテオレマや豚小屋を彷彿とさせ、パゾリーニの重要な役者であるニネット・ダヴォリが本名ででてきてびっくり。ベルトルッチが映画をとるってよ、というのでかけつけたスタッフや役者がよってたかってたのしくつくりあげた結果、やっちゃった感あふれる映画ができちゃった、ってとこなんでしょうか。ふつうの映画としてはだめでしょうが、シネフィルには相互の影響なんかがわかって、ちょっとたまらない映画になっています。フランスとイタリアの監督たちがとったオムニバス映画が何本かあるのですが、それらを彷彿とさせます(「ロゴパグ」「愛と怒り」など)。

クレマンティ好きとしては、「昼顔」(ブニュエル)の暴漢と「豚小屋」(パゾリーニ)の食人鬼のあいだのミッシングリンクがようやくみつかったよろこびをたっぷりと味わうことができました。ぱっとしない主人公の「理想の自分」が昼顔の暴漢風なのがたまらんかったです。前髪をぴっちりなでつけるととたんにさえなくなる、という究極の変身ぶりにもなけました。ボーダーシャツ姿がかわいかったです。このあと「暗殺の森」の変態さん、「スウィート・ムービー」の水兵さん、とランクアップしていくわけなんですが、奇行で逮捕されたエピソードなども思いおこされ、クレマンティ鑑賞ムービーとしては極上の一本です。

ところで。ベルトルッチ監督は「ひきこもる」というシチュエーションが好きなんだな、と思ったり。イタリアの古い建物、暗い本だらけの部屋。外の世界に背をむけるように「自分の分身」ととじこもり、なんらかの刺戟に溺れ、やがて決別する、っていうパターン。そういえば、最新作も「義姉」ととじこもるはなしですね。
by supersonicxxx | 2013-04-07 01:00 | イタリア映画